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用語集 - 政策/制度

カーボンプライシング

企業などが排出する炭素に価格を付けることにより、排出者の行動を変容させる政策手法です。カーボンプライシングによって、再生可能エネルギーを使って作られた製品や事業の価値が向上した場合、脱炭素技術の普及や投資の後押しも期待されます。

例えば、以下のような手法があります。

  • 炭素税
    燃料や電気を利用することで排出されたCO2に対して課税する仕組み
  • 排出量取引
    企業ごとに排出量の上限を決め、上限を超過する企業と下回る企業との間でCO2の排出量を取引する仕組み
  • クレジット取引
    CO2削減の価値をクレジット/証書化し、売買取引を行う仕組み
    ex) 非化石証書、Jクレジット

参考

RE100

コラム参照

EV100

RE100やEP100と同じく、温室効果ガス排出量削減に取り組む国際環境NPOの「The Climate Group(英国)」が主宰して2017年9月に発足した、企業による電気自動車(EV)の使用や、環境整備促進を目指す国際イニシアチブです。署名企業には2030年を目標に、所有車両の電化や全関連施設への電気自動車用充電設備の設置など、いくつかの項目から1つ以上を公式にコミットすることが求められます。

日本の加盟企業の一例(発表年月順)

イオンモール 2017年11月10日
アスクル株式会社 2017年11月29日
NTT(日本電信電話株式会社) 2018年10月29日
東京電力ホールディングス株式会社(TEPCO) 2019年5月28日
高島屋 2019年9月25日

エネルギー供給構造高度化法

正式には「エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律」。エネルギーを安定的かつ適切に供給するために事業者に対して、太陽光や風力等の再生可能エネルギー源や原子力といった非化石エネルギー源の利用と、化石エネルギー原料の有効な利用を促進するために必要な措置を講ずるものです。

非化石電源比率の目標値

小売電気事業者に対し、2030年度における非化石電源比率の目標を44%以上としています。取り組みが進まない事業者に対しては、経済産業大臣から指導・助言・勧告・命令を行うとされています。また、すでに目標達成した電気事業者にも、さらなる比率向上を求めています。

FIT(固定価格買取制度)

Feed-in Tariffの略。再生可能エネルギーで発電した電気を、国が定めた価格で、電力会社が一定期間買い取ることを義務付けた制度です。これにより設備コストを回収する見通しが立つため、再生可能エネルギーの普及を促進できます。この買取費用の一部は、電気を利用する需要者から「再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)」という名目で、電気料金に上乗せされて集められます。
対象となる再生可能エネルギーは「太陽光」「風力」「水力」「地熱」「バイオマス」の5種類です。そのいずれかで、国が定める要件を満たす事業計画を策定し、計画に基づいて新規に開始する事業が対象となります。

FIT終了と余剰電力の活用

住宅用太陽光発電の余剰電力は、固定価格での買取期間が10年と定められています。よって期間満了後も継続して太陽光発電システムを利用する場合は、全量を自家消費するか、新たな売電契約を結んで余剰電力を売電することになります。自家消費としては、家庭用蓄電池を購入して夜間利用したり、プラグインハイブリッド自動車へ充電して利用する方法があります。引き続き売電する場合は、売電可能な小売電気事業者などと「相対・自由契約」を結んで自家消費しきれない余剰電力を売電する方法をとります。

参考

FIP

Feed-in Premiumの略。再生可能エネルギーの発電事業者が市場価格で売電する際に、「割増金(プレミアム)」を補助金として上乗せする方式です。ドイツやスペインなどで、すでに導入実績があります。再生可能エネルギー事業を支援するのが目的で、FIT制度終了後の制度として注目されています。

FITとの違い

FITは再生可能エネルギーの促進を目的に発電事業者を保護する性質のものであるため、過剰な価格設定によって電力市場に悪い影響を及ぼす懸念があります。一方、FIPは市場価格の変動の影響を受けるため、より需要を意識した電力供給や、効率的な事業運営、技術の向上といった市場競争が促されると考えられます。またFIPには、政府の制度費用の負担削減も期待できます。FIT制度は電力の供給が過多の場合も決まった価格で買い取る義務があるため、費用が膨らんでしまうことがあります。FIPなら供給過多などで市場価格が低ければ、事業者も供給を抑えようとします。これなら政府も補助などがしやすく、制度の安定化が図れます。ただし、事業者にとっては当然、開発や運営における負担が増し、利益予想が難しくなります。

グリーン電力証書

自然エネルギーにより発電される「グリーン電力」。発電時に二酸化炭素を排出せず、再生可能であるため環境負荷が少ないという「環境付加価値」を、第三者認証機関の認証を得て「証書」化し、取り引きするものです。証書の対象になる発電設備は、「太陽光・風力・水力・地熱・バイオエネルギー」の 5 種類です。

活用方法(購入対象者、購入方法)

グリーン電力を発電する設備の保有していない企業や自治体は、グリーン電力証書発行事業者から証書を購入することで、証書に記載された電力量(kWh)相当分のグリーン電力を利用し、自然エネルギーの普及に貢献したとみなされます。また、購入費用は証書発行事業者を通じてグリーン電力発電設備の維持・拡大に利用され、日本におけるクリーン電力の普及拡大に寄与したと考えられます。

非化石証書

非化石証書は、非化石電源で発電された電気に付随する環境価値として証書化したものであり、FIT非化石証書、非FIT再エネ指定非化石証書、非FIT再エネ指定なし非化石証書の3種類に分類されます。
環境価値に加え、非化石証書には「産地価値」や「特定電源価値」が存在します。また環境価値には、「非化石価値」「ゼロエミ価値」「環境表示価値」の3つの価値があり、「非化石証書」は、これら3つの価値を顕在化したものです。

RE100への活用について

RE100には、非化石証書のうち政府によってトラッキングされた属性が付与されている非化石証書等が利用可能とされており、FIT非化石証書の取引量は、トラッキング(実証)導入後に大きく増加しています。

Jクレジット

省エネ設備の導入や森林管理等によって、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出削減量や吸収量を「クレジット」として国が認証する制度です。クレジットは売買され、購入者はそれによって低炭素社会実行計画の目標達成や、カーボン・オフセットに利用することができます。また、中小企業や自治体は売却益を得られるため、省エネ・低炭素投資等が促される効果が期待できます。以前には「国内クレジット制度」と「J-VER制度」がありましたが、これらを発展的に統合して平成25年度から経済産業省・環境省・農林水産省により共同運営されています。

活用方法(購入対象者、購入方法)

クレジットの購入者は大企業を中心に、中小企業や自治体も含め、温室効果ガスの排出削減等を目指す者であり、3 通りの購入方法があります。1つめは「J クレジット・プロバイダー(オフセット・プロバイダー)」という、仲介事業者を通じて購入する方法。2つめは、J-クレジットを保有する事業者から直接購入する方法。そして3つめは、J-クレジット制度の事務局が実施する入札に参加して購入する方法です。

容量市場

コラム参照

電力先物取引市場

コラム参照

需給調整市場

再生可能エネルギーの導入が進む中で、同時同量を原則とする電力においては調整力を効率的に確保してくことが重要とされております。発電量と使用量を同量にする調整を行うことで、周波数を維持する役割を一般送配電事業者が担っており、この需給調整力を取引する場を需給調整市場と呼ばれます。
そのため、発電事業者が売り手となり、送配電事業者が買い手となって取引されます。
2021年4月の開設が予定されており、三次調整力②の運用を開始し、段階的に広域的に調達する商品を拡大する予定です。

調整力の取引とは

買い手である一般送配電事業者は、周波数を維持するために必要となる「発電量/使用量を増減させる権利」を買うことになります。また調整力として発動させた場合に生じた電力量(kWh)についても費用を支払う必要があります。
調整力を取引した発電事業者は、一般送配電事業者からの指令に基づき発電量を調整する必要がありますが、何らかの事情により調整力を供出できなかった場合、ペナルティ料金の支払いが発生します。

ベースロード市場

発電の方法や特性などから「ベースロード電源」「ミドル電源」「ピーク電源」と3つに区分される電源。電力の需要変動に対応することが目的であるため、ベースロード電源には発電単価が安く、高効率で、安定した供給が見込める「石炭」「地熱」「水力」「原子力」といった電源が分類されています。このためベースロード電源は、日本の電気事業において価格を抑えて安定的な電気の供給を実現する、重要な役割を果たしています。
これらで発電される電力をkWh単位で取り引きする市場が「ベースロード市場」です。日本卸電力取引所(JEPX)が開設しています。売り手と買い手双方の入札価格や取引量から、取引価格(約定価格)が決まります。これを基準にすることで、実際の売買では約定価格より「低い価格の売り入札」も「高い価格の買い入札」も、どちらも約定価格で売買することができます。

市場開設の経緯

ベースロード電源の大半は、大手の電力会社が保有しています。ベースロード電源は、建設に関わる制約や高額な投資費用から、新規電力事業者が開発するのは容易ではありません。そこで、電力自由化により新規参入した小売電気事業者が、大手の電力会社と同様の環境でベースロード電源を利用できる環境を実現することで、小売競争が活性化されることを目的としてベースロード市場が創設されました。よって、大手電力会社が自社およびグループ内の小売部門へ供出する価格よりもベースロード市場へ供出する価格が不当に高くならないよう監視し、適切な競争が行われるようにすることが極めて重要です。

非化石価値取引市場

2018年5月に化石燃料を使わない、再生可能エネルギーや原子力発電を対象とした非化石価値取引市場が創設されました。創設の目的としては、小売電気事業者の高度化法上の非化石電源調達目標の達成を後押しするとともに、需要家にとっての選択肢を拡大しつつ、FIT制度による国民負担の軽減に資するためとされています。
利用者にとっての利便性と売り出し量の細分化を防ぐ観点から、年に4回のオークションが実施されており、当該オークションでは四半期分の電力量に相当する非化石証書が市場に供出されています。

取引価格について

FIT非化石証書については、需要家がFIT賦課金として費用負担している点等を鑑み、入札最低価格(1.3円/kWh)を設定しておりますが、非FIT非化石証書については、最低価格は設けないこととされています。
また、最高価格については、高度化法の中間評価の基準の設定等によっては、価格が高騰する可能性があるため、FIT非化石証書と同様に価格高騰時の負担抑制の観点から設定(4円kWh)されています。

インバランス

電力の需要量と供給量は合わせること(同時同量)が求められます。しかし、発生してしまう差分を「インバランス」と言い、大きなインバランスが生じてしまった場合に支払う必要があるペナルティ料金が「インバランス料金」です。太陽光発電や風力発電は天候の影響を受けやすく、新電力(PPS)事業者にとってペナルティ料は大きなリスクとなっています。

インバランス料金を抑えるには

顧客数を増やして同時同量を守りやすくする手段が考えられます。しかし、比較的規模が小さく顧客数が少ない新電力会社には難しいという現実があります。このため、いくつかの事業者が集まってインバランスの精算を実施しており、この単位を「バランシンググループ」と言います。

ゲートクローズ

小売事業者や発電事業者が広域機関に提出した計画値に対して、後から過不足調整を行うために受給日前日17時から開かれる「当日計画」の提出期限(30分ごとの実需給の開始時刻の1時間前)です。

日本卸電力取引所(JEPX)

電力の自由化にともない、電気の売却先を探す発電事業者と、電気を調達したい小売事業者が電力の売買を行える場として2003年に設立された、国内唯一の会員制の卸電力取引市場です。電力自由化によって「発電、送電、小売」が独立した事業となることから、事業者の電力供給量と需要量の不一致を調整するために、過不足分を市場で販売・調達できるシステムが必要とされました。「ベースロード市場」はJEPXが開設しています。

取引されている電力

取引が行われる市場と、取引の概要は下記の通りです。

  • 一日前市場(スポット市場)
    翌日の電力を、30分単位で計48商品に分けて取り引きします。約定方式は、入札価格によらず約定価格で取引される「ブラインド・シングルプライスオークション」です。
  • 当日市場(時間前市場)
    一日前市場(スポット市場)で翌日に受渡する電気の取引がなされた後に起こる不測の需給ミスマッチに対応します。取引は1日を3場に分けて取引されます。約定方式は、株式市場のような価格優先・時間優先で売買注文をマッチングさせる「ザラ場」を採用しています。
  • 先渡市場
    将来の特定期間内に受渡する電気を取り引きする市場です。「月間24時間型、週間昼間型」など、特定の期間と時間帯を組み合わせた、計24の商品を提供しています。取引手法は、当日市場と同じ「ザラバ手法」です。
  • 分散型・グリーン売電市場
    買い手は取引所会員ですが、売り手は取引会員以外でも許され、小規模発電などを売ることができる市場です(販売価格、販売量、売り条件等を任意に設定)。売り手から提示され、取引所が掲示した電気と条件に対し、最も条件のよい買い手が落札者として選定される方法で取引されます。

発送電分離

これまで大手電力会社が所有・管理してきた送配電網を、その送配電部門を分社化して切り離すことで、文字通り「発電」と「送電」を分離・独立させる施策です。

発送電分離の目的

電力自由化によって新たな発電事業者の小売電気事業への参入が進みましたが、電気を届ける送配電網を新規参入した事業者も平等に利用できなければ健全な市場競争は生まれず、電力システム改革は進みません。よって、送配電部門を別会社にすることで中立性を高めようという考えです。

導管分離

都市ガスの供給には「ガス導管」の利用が不可欠です。その多くを保有し、維持・運用する「ガス導管事業」を担ってきた都市ガス事業の大手「東京ガス、大阪ガス、東邦ガス」から、導管部門を分離させて別会社化するものです。これにより、新規参入するガス小売事業者と、既存の都市ガス事業者の小売部門が、導管網を公平に使用できるようにすることを目的としています。

卒FIT

卒FITとは、再生可能エネルギーで発電した電力を一定期間固定価格で電力会社が買い取ることを義務付けた制度である「FIT(固定価格買取制度)」の期間が終了した発電設備のことです。
住宅の太陽光発電設備においては、固定価格での買取期間が10年と定められており、制度開始から10年が経過した2019年度以降、順次卒FITとなっていきます。
卒FITとなった余剰電力は、電力会社に買い取ってもらうことができます。電源を安定的に確保したい新電力は、大手電力会社よりも高い金額で買い取りをしています。
また、蓄電池や電気自動車を活用して自家消費することもでき、蓄電池や電気自動車を持っている方向けのプランを提供している事業者も存在します。

参考

関連ソリューション

再エネ賦課金

再エネ賦課金(再生可能エネルギー発電促進賦課金)とは、「FIT(固定価格買取制度)」において電力会社が買取にかかった費用について、電気を使用するすべての人に負担を求めるしくみです。
 
一般家庭の再エネ賦課金は以下のように計算されます。

再エネ賦課金=使用電力量✕再エネ賦課金単価

 そのため、電気の使用量が増えるほど、再エネ賦課金の金額も大きくなります。
 
再エネ賦課金の単価は全国一律です。
以下の計算式で毎年経済産業省が決定します。

賦課金単価(円/kWh)
=【再エネ買取費用(円) - 回避可能費用(円) + 事務費(円)】÷ 販売電力量(kWh)

回避可能費用は、日本卸電力取引所の市場価格に基づき算出されるため、電力価格高騰の影響を受けます。
 
再エネ賦課金の単価は年々上昇し2022年度は3.45円でしたが、2023年度は燃料価格の上昇を受けて電力の市場価格が高騰していたことにより1.4円まで一気に値下げされました。
 
2024年度は燃料価格が下落し、電力の市場価格も下がることが予想されたため、再エネ賦課金の単価も3.49円まで再び上昇しました。 

参考

出力制御

出力制御とは、発電量が電気の消費量を上回りそうなときに、需給バランスを保つために各発電所の発電量を抑える措置のことです。

出力制御は以下の順番で実施されます。これは「優先給電ルール」と呼ばれ、需給バランスを維持するための手順としてあらかじめ法令等で定められています。

  1. 火力発電の出力抑制、揚力・蓄電池の活用
  2. 他地域への送電(連系線)
  3. バイオマス発電の出力制御
  4. 太陽光発電・風力の出力制御
  5. 原子力・水力・地熱の出力制御

2021年度までは九州電力エリアのみで実施されていましたが、2022年度には全国6社で開始され、2023年度には東京電力を除く9社で実施されました。

2022年度に5.75億kWhだった出力制御量が、2024年度には24.2億kWhまで急増する見通しとなっています。

こうした背景を受け、資源エネルギー庁が2023年に「出力制御対策パッケージ」を取りまとめました。
「需要面での対策により、出力制御時間帯の需要家の行動変容・再エネ利用」を促進することを基本的な考え方としたうえで、産業部門に向けた具体策として、系統用蓄電池や再エネ発電所併設型の蓄電池などの導入、DR(デマンドレスポンス)の推進などを通じて、需要の創出やシフトを行うとしています。

参考

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