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事例紹介

多くの承認品目、システムで効率化を追求 “社内の相談役”担う

鳥居薬局株式会社 様

2017年10月23日

多くの承認品目、システムで効率化を追求 “社内の相談役”担う

国内で200品目以上の医療用医薬品を扱う鳥居薬品。その中において薬事部門は、新薬の承認申請から承認後の用法追加やCMC関連の変更による一部変更申請や軽微変更届出、申請時のeCTDによる電子申請対応、さらにGMP適合性調査申請や各種業許可管理と幅広い薬事業務をワンストップで対応し、行政に対するゲートキーパー役でありつつ、各部門と深く関わり、頼りにされる“社内の相談役”という役割を担う。ただ、現在同部門に在籍するのはわずか7人で、精度の高い業務を行うためには効率化が必要だった。200品目以上にわたる承認情報の管理を行うのに、日本ユニシスが提供する承認情報の保管・管理を支援する「OpenApproval」(オープンアプルーバル)、申請書等の作成・支援サービス「OpenTrusty」(オープントラスティ)が一役買っている。今後は、各部門でシステムを幅広く共有し、患者に必要な医薬品を届ける品質保証体制を強化したい考えだ。

左から仁禮氏、伊瀬氏、矢野氏
左から仁禮氏、伊瀬氏、矢野氏

製薬企業の薬事業務をめぐっては、製薬大手では、新薬の承認までを担う開発薬事と、承認後のライフサイクルマネジメントや業許可等の対応を担う薬制薬事で分業化されているケースが多い中、同社の薬事部門は薬事にかかわる業務のほぼ全てをこなす。承認品目は医療用医薬品として200品目以上。ジェネリック医薬品メーカーを除き、中規模の製薬企業としては多くの承認品目を有しており、特にその大半を占めるアレルゲン製剤では、類似する多数の品目の承認内容のわずかな違いを正確に把握し、膨大な承認情報を適確に管理しなければならない。

承認情報の適確な管理と、薬事法規遵守のための調査・指導・行政対応に加え、多岐にわたる薬事業務をワンストップで対応する。新薬の承認申請では、開発段階から薬事部門が関与。治験相談から必要資料の取捨選択、作成に至る段階での校正作業、eCTDリーフファイルの取りまとめ・SR化からeCTD編纂まで、研究、開発等の複数部門と連携し、スムーズな承認申請につなげる。承認後のライフサイクルマネジメントでは、薬事部門も製造を担当する工場へと足を運ぶ。品質保証部門や製造部門の行う業務が行政当局から求められるレベルを維持できるよう、きめ細かく確認し、指導している。

ただ、これらの膨大な業務を正確かつ効率的に実施していくためには、ITソリューションの活用が必須。承認情報の経時的な版管理や閲覧管理を行えるオープンアプルーバルを導入し、さらに申請書等の作成・支援ではオープントラスティも実装、作業の正確性向上や作業時間の短縮に努めている。

オープントラスティの「差分比較機能」は、規格違いなどの類似する内容の申請書等を作成する場合、または申請書の差し替え指示に対応する場合において、二つのデータの相違箇所の確認が可能で、厚生労働省が提供する電子申請用ソフト「FD申請ソフト」でのデータ変更・修正箇所が一目で分かる。

承認情報にかかる行政対応の最終関門となる薬事部門にとっては、欠かせないツールだ。薬事部副部長の矢野正晋氏は、「行政に提出する文書に対しては薬事部門が最終的なチェック機能を担うが、文書の整合性を確認する場合にオープントラスティを用いることで、差分比較のポイントが非常に分かりやすくなり、作業が効率的にできるようになった。人間の目視によるチェックに比べ、正確性も向上している」と強調。FDデータ作成担当者が各品目間での記載を統一させる作業も差分比較機能によって省力化され、資料品質の確保面で効率化や時間短縮が図れるとした。

そのほか、パソコンの故障による作成中のFDデータの消失リスクといった課題に対しても、クラウドサーバーにデータが保存されるオープントラスティを使うことで改善されると共に、FDデータの常時共有が可能になった。

申請書等の誤字や脱字などは許されず、入力する担当者のストレスは大きい。特にFD申請ソフトでは、誤った操作を起こすことも少なからずあり、ミスした結果、承認情報が変わってしまう恐怖感と戦いながらの入力作業になっている現実もあるという。薬事部薬事第一チーム次長の伊瀬聖子氏は、オープントラスティの入力や操作の簡便性を挙げ、「申請書等を作成する際の心理的負荷は減った」とし、安心して使えるシステムだと述べる。

品質、有効性および安全性が担保された医薬品を開発、供給していくことが製薬企業の使命であり、医薬品の信頼性は“情報”があってこそ保証される。同社の薬事部門では、各部門に点在する情報を集約し、各部門が安心して情報を閲覧できるセキュリティ環境、各部門の業務に応じて承認情報を活用していく体制を追求する。今後は、承認書の内容と現場での実態に齟齬がないように品質の最終管理を行うと同時に、製造・開発現場を起点とした品質保証プロセスの構築を目指す。

矢野氏は、「オープンアプルーバルやオープントラスティで申請管理、工場での原薬管理など総合管理ができるようになれば、薬事部門による全体管理から、各部門で管理していくダブルチェック体制を実現でき、品質保証のワークフローを変革することも可能になる」と話す。

2017年10月23日発行「薬事日報」掲載記事

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