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コラム|柿尾 正之氏のダイレクトマーケティングview 第14回

柿尾正之【かきお・まさゆき】

小売業・外食産業等のリサーチ・コンサルティング業務を経て1986年4月、JADMA:公益社団法人日本通信販売協会(所管:経済産業省)に入局。
おもに調査、研修業務を担当。主任研究員、主幹研究員を経て、理事・主幹研究員。2016年6月退任。
2016年12月 合同会社柿尾正之事務所 設立。現在、企業顧問、社外取締役の他、コンサルティング、講演、執筆等。

〔著書〕『通販~不況知らずの業界研究~』(共著:新潮社)等多数。
〔主な所属学会及び社会的活動等〕日本ダイレクトマーケティング学会理事
〔大学講師歴〕早稲田大学大学院商学研究科客員准教授、関西大学大学院商学研究科、上智大学経済学部、駒澤大学GMS学部、東京国際大学商学部、他多数。

柿尾 正之氏のダイレクトマーケティングview 第14回

2021年12月6日

感染者数も低下し、来年はアフター・コロナの年になるかと思いましたが、まだまだ予断を許さない状況になってきています。ただコロナによって、私達はマイナスなこともたくさん強いられましたが、生活や仕事の仕方にプラスになったこともあったこともあり、先々、振り返った時に大きな転換期であった、と実感することと思います。

当コラムは昨年11月からスタートしましたが、今回で一区切りさせて頂き、通販業界にとっての課題、展望についてお話してみたいと思います。

コロナ禍の通販業界は、不幸を賛美するわけではありませんが、追い風になったことは間違いありません。それまで店舗で購入していた商品、あるいはサービスを人との接触を避けることから通販に向かったのは明らかでしょう。ただ通販業界で留意しなければならないのは、コロナ以前から通販の中心はネットに転換してきており、それが加速しただけのことであり、新市場はそれを進化させたところにあるのかもしれない、ということです。
過去の不幸な出来事も転換するスピードを速め、新たな市場を創造してきました。「それは何だ?」という声が聞こえてきますが、「正直、それが分かったら自分がやっています」と逃げてしまいますが。(笑)何を言いたいのか、というと中国のアリババは、いろいろな要因があってのことですが、ネット通販で稼ぐ力衰え、時価総額が半減している、との報道は、その象徴です。日本のプラットフォーム企業の将来性もいかかでしょうか。あえて言うならば衰退している百貨店と同じような状況がおこるとも限らないのです。
その背景を少しお話すると、日本の場合の店舗の根強さを無視してはいけないことが1つ。
2つ目は、古いはずの既存通販企業(非ネット媒体を中心とする)の踏ん張り。
3つ目は通販に限らず、人口減少と、消費意欲(とくにモノ離れ)の減退が加速していくことです。この3つはかなり日本独自のことであるのですが、ネットが生活の根底を支えいくようになるのでずが、店舗あるいは既存メディアの強さは私自身、実感していることでもあります。通販企業としては、企業の存在価値をどこまで先に照準を合わせるか、ということが重要となるものと考えます。

つまり5年後に置くのか、10年後に置くのかではその事業展開は大きく異なります。
たとえば既存通販企業にとっては5年後は、ネットの割合は高めなくてはなりませんが、テレビ、新聞媒体はまだまだ中心に置かなくてはならないかもしれません。10年後に置く場合は、プラットフォーム中心のネット展開から、その先の新市場を意識していく必要があるのではないか、ということです。

コロナ禍を体験した私たちは、それをどのように活かすかということを考えていかなくては体験した意味がないように企業としてもそれは同様であるものと考えます。単にネットで通販を行えば良い、という短絡的なことではなく、これからの顧客に自社は何の価値を提供できるのかが土台になるものと思います。

短い期間でしたが、当コラムにお付き合い頂いたことを、改めて感謝もう上げるとともに、皆様の企業の未来が明るいものであることを祈念しつつ、筆をおきたいとおもいます。
ありがとうございました。