BIPROGY Foresight in sight BIPROGY Foresight in sight

コラム|柿尾 正之氏のダイレクトマーケティングview 第11回

柿尾正之【かきお・まさゆき】

小売業・外食産業等のリサーチ・コンサルティング業務を経て1986年4月、JADMA:公益社団法人日本通信販売協会(所管:経済産業省)に入局。
おもに調査、研修業務を担当。主任研究員、主幹研究員を経て、理事・主幹研究員。2016年6月退任。
2016年12月 合同会社柿尾正之事務所 設立。現在、企業顧問、社外取締役の他、コンサルティング、講演、執筆等。

〔著書〕『通販~不況知らずの業界研究~』(共著:新潮社)等多数。
〔主な所属学会及び社会的活動等〕日本ダイレクトマーケティング学会理事
〔大学講師歴〕早稲田大学大学院商学研究科客員准教授、関西大学大学院商学研究科、上智大学経済学部、駒澤大学GMS学部、東京国際大学商学部、他多数。

柿尾 正之氏のダイレクトマーケティングview 第11回

2021年9月24日

CRMというワードを現在では知らない方はいないかと思います。
Customer Relationship Management、和訳すると「顧客関係性マネジメント」、つまり顧客との関係をいかに構築していくか、ということです。それでは、なぜ通信販売、ダイレクトマーケティングとCRMは密接に関連しているかというと、やはり顧客リストが基本となるビジネスであるがゆえに、顧客との関係を構築しやすいことだと思います。

例えば店舗では販売形態として、顧客の顔は見えても、誰が何をいつ、そしてどれだけの頻度でいくら購入した、というような情報は持ち合わせてはいません。最近、店舗でも多いポイントカード的なものでも販促としての機能はあっても顧客とコミュニケーションをとることは、セールの案内のようなもの以外は少ない状況です。特別に店舗がCRMに対して後ろ向きというわけでは無いとは思いますが、店舗というリアルな場所が無い通販では、その基本的な拠り所が「顧客リスト」にあるということは、CRMを構築していくことで、かなりのアドバンテージとなることは間違いないところです。それでは何故、CRMが必要となってきているか、ということですが、これは皆さんご存知のように新規の購入者が獲得しにくくなってきていることが第一の要因です。
かつては(20年前くらい)はCPO(顧客一人当たり獲得コスト)は千円を切る企業がある時代がありましたが、今では数万円ほどかかるとも言われる時代となりました。ということはかつての10~20倍のコストがかかるわけですから、いかに獲得した顧客が長期的に自社と良好な関係を結んでいくことが大切であるわけです。

一方、近年ではネット通販の利用者、とくに大手ECプラットフォームの利用者の割合は増加しています。プラットフォームに店舗や商品を出店、あるいは出品したりすることは一般的になりましたが、問題は購入者リストが提供されないことで、自社サイトとの併用をおこなう形が多くなっているようです。EC通販の時代になり、多くの通販企業の悩ましいところは大手ECプラットフォームの力がますます強くなっていくなかで、自社の顧客リストをどのように構築していくのか、という点です。そのためには2つの機能。つまり新規顧客獲得と顧客の継続化率の向上があります。今回のテーマのCRMは後者の機能の根幹を成すものとなります。
たとえば年間1万人の顧客が獲得できたとして、次年度の継続率が50%の企業がCRMの効果により5%の継続化率アップ、つまり250人の顧客が継続顧客として増加した場合の売上、利益貢献が図られる、ということです。よく、この話で、聞かれることは、面倒くさいCRMをおこなうよりも新規顧客獲得の効率をあげればよいのでは、というものです。実際、そのタイプの企業も多いようですが、長期的な自社にとっての量として顧客増加よりも質としての顧客の基礎力が強くなることの効果は大きいのではないか、と考えています。

今回は総論的な話でしたが、次の機会では少し詳細なことについて述べさせて頂ければと思います。