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コラム|柿尾 正之氏のダイレクトマーケティングview 第6回

柿尾正之【かきお・まさゆき】

小売業・外食産業等のリサーチ・コンサルティング業務を経て1986年4月、JADMA:公益社団法人日本通信販売協会(所管:経済産業省)に入局。
おもに調査、研修業務を担当。主任研究員、主幹研究員を経て、理事・主幹研究員。2016年6月退任。
2016年12月 合同会社柿尾正之事務所 設立。現在、企業顧問、社外取締役の他、コンサルティング、講演、執筆等。

〔著書〕『通販~不況知らずの業界研究~』(共著:新潮社)等多数。
〔主な所属学会及び社会的活動等〕日本ダイレクトマーケティング学会理事
〔大学講師歴〕早稲田大学大学院商学研究科客員准教授、関西大学大学院商学研究科、上智大学経済学部、駒澤大学GMS学部、東京国際大学商学部、他多数。

柿尾 正之氏のダイレクトマーケティングview 第6回

2021年4月16日

~「ウィズコロナ時代に、自社ECの集客を上げるには?」~


昨年の2月頃からコロナ禍となり、1年以上、経ちましたが、消費者の生活、とくに食品をはじめとする商品の購入を支えたのはネット通販であると言えます。総務省統計局の「家計消費状況調査~ネットショッピングの状況~」をみると、外出自粛要請が開始された昨年の4月頃から、ネット通販の利用世帯割合は上昇し、最新の今年の2月時点では、前年に比較して9ポイントも増加して51.5%の世帯がネット通販を利用しています。明らかに、コロナの影響が大きい、といえるでしょう。

このようにネット通販市場が拡大している状況であるとネット通販事業社のすべてが、順調に事業がおこなわれているかというと、そうでもない現実が浮き上がってきます。
まず第一にリアルでの販売が敬遠されている、ということは、ネット通販事業へ参入している事業者数が多くなり、競合状況が厳しくなっていることがあげられます。
そして第二には、アマゾンや楽天といった大手プラットフォーム市場を利用することが中心となっていますが、顧客リストが自社の自由にはならないことから、販売チャネルとしては機能しますが、中長期的な通販事業としては機能しないことを考える必要があります。参入している事業社数ですが、楽天市場の出店者数は昨年の10月時点での店舗数51,815店、商品数では2億7千7百万点にもなります。この話になると、コンサルタント系の方々は、それだけ販売チャネルとしての魅力がある証し、販売のノウハウがあれば売上拡大が見込める、と解説されますが、勝ち組があれば、ある一定数の負け組がいることは容易に想像がつきます。いずれにせよ、EC担当者の方々の悩みは「なかなか新規顧客の集客に繋がらない」につきるかと思います。もちろん教科書通りに努力され、なかには専門のコンサルタントのアドバイスを基に実践されているかと思いますが、結果が出なければ事業社としては厳しい評価にならざるを得ません。

結論から言うと、私の回答は「やるべきことをきちんとやっているか?」に尽きるかと思います。一般的なEC通販における集客方法を簡単に整理しますと「検索」、「広告」、「SNS」の3つがあります。即効性が一番高い方法は広告ですが、大きくネット上の広告から集客する方法と、ネット以外のメディアからサイトに誘導される方法があります。
つまりテレビ通販企業が自社サイトに誘導するケースです。広告は当然、コストがかかるので、企業の売り上げ規模、予算、目標等から投下できる額は変わってきます。SNSは、投稿を拡散する機能があるものもあり、その結果次第ですが、中には大量の集客を得るケースもあります。これらの方法を着実に行うことが、集客方法のコアとなりますが、それ以前の問題として、まず自社が販売している商品の力を再検討することが必要です。ここでいう「力」には、商品そのものの価値と、売り方(訴求ポイント)が把握できているか、の2つの要素があります。もうひとつ強いて挙げるなら、ABテストをしっかりと丹念におこなうことが「急がば回れ」のごとくEC力を向上させる近道であるかもしれません。