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コラム|柿尾 正之氏のダイレクトマーケティングview 第3回

柿尾正之【かきお・まさゆき】

小売業・外食産業等のリサーチ・コンサルティング業務を経て1986年4月、JADMA:公益社団法人日本通信販売協会(所管:経済産業省)に入局。
おもに調査、研修業務を担当。主任研究員、主幹研究員を経て、理事・主幹研究員。2016年6月退任。
2016年12月 合同会社柿尾正之事務所 設立。現在、企業顧問、社外取締役の他、コンサルティング、講演、執筆等。

〔著書〕『通販~不況知らずの業界研究~』(共著:新潮社)等多数。
〔主な所属学会及び社会的活動等〕日本ダイレクトマーケティング学会理事
〔大学講師歴〕早稲田大学大学院商学研究科客員准教授、関西大学大学院商学研究科、上智大学経済学部、駒澤大学GMS学部、東京国際大学商学部、他多数。

柿尾 正之氏のダイレクトマーケティングview 第3回

2021年1月22日

遅ればせながら、本年もよろしくお願いします。コロナの脅威に混迷した昨年から、今年はコロナとの付き合い方の方向性を見据えていく年になるかと思います。そのような状況の中で、生活や仕事の中でのECの役割りは一層、重要になっていくものと思われますが、今回はEC通販の利用者の状況について見ていきたいと思います。

まず、消費者側のサイドからみる場合は、総務省の家計消費状況調査をもとに、毎月発表されている「ネットショッピングの状況について」のデータがもっとも適切かと思います。現時点での最新の発表は昨年の11月分(1月8日発表)ですが、その結果によると1カ月分の支出額は約1万9千円と、前年同期と比較すると33.2%増加しています。
また、ネットショッピングの利用世帯の割合は前年同期の43%から、全体の半数を超えて52%となりました。コロナの影響で、とくに食品は73%も増加していることが目立っています。
日本のECの商品別の傾向としての特長は、これまで商品別でのEC化率にバラつきがあることでした。とくに食品は背景となる店舗の立地性やサービス度の違いにより、欧米とは異なり、日本の場合はEC化率が低くなっていました。
しかし、今回のコロナでは店に行くことに対する敬遠志向もあり、食品の購入に際してのEC通販への移行が行われたようです。

さて、増加するEC通販市場ですが、いくつか今年のポイントをあげておきたいと思います。一言で言えば、現在はEC通販のビジネスチャンスが大きい状況ですが、市場を見て思うことは供給側の企業は、大きく「顧客を想う企業」と「顧客を想わない企業」の2つに分かれる、ということです。
EC通販は、確かに便利なツールではありますが、その中でも成功する企業は、常に顧客が感じる価値を軸に事業を行っているのではないでしょうか。たとえば食品の場合、食品というモノとして販売するのと、顧客が新しい価値観を感じてもらうように、商品提案をする、いわゆる「コト」として提供するのでは、その事業の方向性は大きく変わります。また、その基本としては顧客情報をどのように収集して整理し、さらにはそれをどのように利用していくか、ということを意識的におこなう必要があります。

今年のEC通販市場はさらに拡大してくことは間違いないところですが、それと同時に競争激化も進んでいくのではないか、と思います。市場拡大=成功、という甘い公式は通じません。有効な顧客情報を持ち、それを効果的に利用できる企業が生き残っていくでしょう。