BIPROGY Foresight in sight BIPROGY Foresight in sight

横須賀市中央消防署副署長
消防司令長 岩崎力大様
インタビュー後編

クロノロジーによる
災害時の情報管理・運用の核心

※取材当時の商号は日本ユニシス株式会社でしたが、2022年4月1日よりBIPROGY株式会社に変更となりました。

【後編】緊急時にこそ的確な情報管理が必要になる!

時系列によって災害時の情報を管理するクロノロジーの必要性や運用のポイントをお伺いする岩崎様へのインタビュー。前半ではその意義や必要性を中心にお話しいただきました。

いよいよ後半は実際の運用でのポイントや、災害ネット活用の将来像についてお話を伺います。

現横須賀市中央消防署副署長 消防司令長

岩崎力大様

日本ユニシス株式会社

堀田尋史

クロノロジー情報活用のポイントは
正しい運用体制と日頃からの訓練/慣れ

堀田:
さまざまなお客さまに向けてクロノロジー活用のメソッドのようなものをお伝えしていく中で、災害対応や危機管理のご経験がそれほど長くないご担当者さまからは、時系列に並んだ膨大な災害情報を前にして「どこからどう手を付けていいのか分からない」というご指摘を受ける場合があります。収集された膨大なクロノロジー情報をどういう視点でさばいていけば良いですか。

岩崎様:
まず入力する人とそれを利用する人を分けること。入力者は入力のみに専念することで効率的に情報を集約できます。その後リーダーやマネージャークラスが、入力された情報を見ながらどう動けばいいのかを判断します。また、判断力や感覚を磨くには定期的に図上訓練を実施することです。もう1つは日常からクロノロジー情報を活用してみることです。いきなり大規模な危機事案の対応をするのは確かに難しい。従って日常業務でのリスク管理などを目的に、発生したヒヤリハット情報を入力しておいて、それがお客さまにどのような影響を及ぼすのか?など考えながら業務改善していくことで感覚を鍛えることができます。

岩崎 力大様

堀田:
お使いいただく方の層もさまざまなので、クロノロジーの良さを伝えるだけでなく、より実用的な運用方法や効果的な活用方法も併せて提案していくことが重要なのかなと最近特に感じています。

岩崎様:
我々も消防は日頃から災害や危機事案に接していますが、他の部局の方は日常的にそういったものに接する機会はあまりありませんのでいざという時に速やかに行動するのは難しいでしょう。地道で時間もかかりますが訓練を繰り返すことで意識付けしていくしか方法はないと思います。
災害ネット構築のきっかけとなった阪神淡路大震災が発生してから、現在までの年数をかけてようやくここまでイメージが出来上がってきました。一朝一夕でできる話ではないので、何年もかけて実際に訓練を積んだりさまざまな事象を検討したりしてみて「やはりこうすべきだ」「こういう機能が必要だ」というようにまだどんどん変わっていくべきものだと思っています。

岩崎様、堀田

堀田:
災害は発生頻度が少ないためにどうしてもノウハウが蓄積しにくいということがありますね。もう1つ課題になるのが災害時に「情報を記録する」ということだと思うのですが。

岩崎様:
災害時は災害そのものに対応することが何よりも優先されるので、「情報の記録」にまで手が回りません。しかし記録がなければまず何をやったのかが分からず、事後検証もできません。責任追及するためではなく次につなげるための記録として、災害時の記録は非常に重要です。だからこそ、現場に情報入力のモチベーションを下げずに入力させる仕組みが重要なのです。

クロノジー
出典:消防防災科学センター「災害写真データベース」

「災害ネットの社会インフラ化」が
社会全体の災害対応力を強化できる

岩崎様:
災害時には「自助・共助・公助」(※)というキーワードが重要になります。大規模災害が発生した際にはとても公助だけでは対応しきれません。消防や警察などもみな被災し、その中で多くの人を助けるためには公助だけの人材では明らかに足りません。
(※自助:自ら自分の身を守ること、共助:地域や共同体において身を守り助け合うこと、公助:公的機関による援助)

堀田:
災害ネットによって最終的に実現したいのは、まさに自助・共助・公助がバランス良く機能することで社会全体の災害に対する対応力・適応力を強化することなのではないのかと思っています。

世の中の多くの企業さまはバリューによってお互いつながっています。道路が寸断されてしまえば運輸・物流関連の経済活動が止まってしまいメーカーも経営が危うくなるかもしれません。「社会が一丸となって災害を乗り切らなければならない」という状況下で、災害ネットのような情報システムが企業や組織間の垣根を超えて社会インフラとして機能することができれば、必要な情報を共有してバリューをうまくつないでいくことができるかもしれないと考えています。災害時などでの限られた時間やリソースの中でいかに社会全体として効率的・合理的に機能できるかという課題に対してクロノロジーの考え方は非常に有効だと思っています。

岩崎様、堀田

岩崎様:
一旦災害が発生すると、さまざまな組織や人が関わってくることになります。そのため、共有できる情報は共有して何らかの問題解決に役立てようという動きがあるのは事実。クロノロジー的な発想で共有した文字データをどこまで有効活用できるのかどうかはまだ判断できませんが、例えば電力の復旧状況の情報を使って、全体の復旧状況の目安を可視化するようなことができるようになるかもしれません。

ユーザー企業同士の異業種間交流が
新たな運用術を生み出す

堀田:
先般、災害ネットを導入された企業さまにお集まりいただきユーザー会を行いました。その中で日頃の運用で困っていることや悩みごとなどを共有し、実際に運用している立場で、企業や業種の境を超えてさまざまな解決方法が提示されました。たとえ同業他社であったとしてもそれをどんどん共有して防災やBCPに役立てていく、そんな世界なのかなと思います。

堀田
岩崎 力大様

岩崎様:
それは本当に大事なことだと思いますよ。クロノロジーの考え方も元はといえば、外部の組織である自衛隊や海上保安庁のやり方を見て「うまくきれいにまとめているな」と感じたところから始まっています。そういう異業種間でのやり方や考え方の違いを認識するところから、新しい発想が生まれきてそれが身に付いていくものです。

堀田:
ユーザー会や本日の対談など、当社がさまざまなノウハウを共有するためにハブになっていけばいいなと感じています。

岩崎様:
第1世代災害ネットの段階でも「いいものができたな」と思っていたのですが、時代とともにさまざまなものが急速に変化していく中で、災害ネットに対して何かモヤモヤしたものがずっと心の中にありました。しかし日本ユニシス、堀田さんと出会うことで自分がこれまで思ってきたことが形にできた。一緒に仕事をさせてもらって本当に感謝しています。また、災害ネットを多くの企業や組織でお使いいただいているということは、私がこれまでやってきた感覚や考え方が間違っていなかったのだなということの証にもなっているような気がします。
大切なのは訓練やミーティングなどでうまく意識付けしたり、先ほどのユーザー会などで企業が集まって啓発したりすることで防災や危機管理に関する感覚を日頃から身に付けておくこと。自然災害だけではなくパンデミックなどによって一瞬にして世の中の常識が覆されてしまうことを私たちは学びました。何かが起こった時には人命ももちろん大切ですが、それと同時に経済も回していかなければならない。そのためには企業活動がストップしてしまわないように、収集した情報を精査して上位組織に上げ、トップが全体の状況を見ながら判断しそれを元に動いていく、そのような体制を築き上げていくのが理想ではないかと私は思います。

岩崎様、堀田

USER PROFILE

横須賀市

横須賀市

基礎情報
市長:上地 克明(かみぢ かつあき)
市制施行:明治40年(1907年)2月15日
中核市移行:平成13年(2001年)4月1日
市域面積(令和元年10月1日):100.82Km2(東西約15.5Km、南北約15.8Km)
人口(令和2年8月1日現在):390,905人
世帯数(令和2年8月1日現在):167,301世帯
人口密度(令和2年8月1日現在):3,877人/km2

本事例に掲載された情報は、取材時点のものであり、変更されている可能性があります。なお、事例の掲載内容はお客様にご了解いただいておりますが、システムの機密事項に言及するような内容については、当社では、ご質問をお受けできませんのでご了解ください。

日本ユニシス株式会社は、2022年4月1日よりBIPROGY株式会社に商号が変更となりました。

*記載の会社名および商品名は、各社の商標または登録商標です。