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災害時における企業内でのコミュニケーションの重要性
〜災害時に問われるコミュニケーション能力〜

BCP・災害対策コラムは、企業のBCP・災害対策に役立つ基礎知識をご紹介します。

日本は災害大国と言われるほど自然災害が起こりやすい環境にあります。地形や位置、地質等の要因が重なり、自然災害は避けられないのが日本ともいえます。そして自然災害はいくつかの種類に分けられます。

  • 豪雨/台風/豪雪といった風雨による災害
  • 洪水/土砂災害
  • 地震/津波/火山噴火といった災害

これらのなかにはある程度の予測ができるものと、正確に予測しにくいものとがあります。特に地震が急に発生したような場合には、対象となるエリアでは急激な状況変化によって情報が共有しにくかったり、行動が思うようにできない、早急な避難が必要な状況でも実現できない、などといったケースがあります。このような事態に企業内で注目しなければならないものは「コミュニケーション能力」です。

目次

  1. 災害別に見る理想的なコミュニケーション
  2. 社内コミュニケーションができていないと起こる不都合
  3. 災害後パニックにならないためにできること
  4. 災害時の企業内でのコミュニケーション能力を最大に

1. 災害別に見る理想的なコミュニケーション

豪雨/台風/豪雪といった雨風による災害

台風を始めとする雨風による災害では、経路予測を含め、ある程度事前に情報が得られることもあります。従業員の出勤情報を共有し相互連絡ができる状態を維持して、外回りをする従業員を避難させたり、休業させたりするなどの対策を「事前に」計画することが理想です。当日、急な災害で予防対策が間に合わなかった場合でも、近距離にいる従業員同士の安否確認、情報収集を双方で行い、企業全体に共有することが理想です。

洪水/土砂災害

土石流のような短時間で起こる災害などは、勤務中・勤務外どちらの状況で起こるかわかりません。こういった予測が極めて難しいケースでは、企業内での連絡網を駆使し、早急な安否確認が求められます。洪水や土砂災害等で事前に警報が出るなどある程度予測ができるケースの場合は、事前にコミュニケーションを取り、状況確認、避難、出社の有無等の情報共有と、正しい状況把握が出来ている状態が理想です。

地震/津波/火山噴火といった災害

震災・津波等による災害では、特に広範囲に及ぶ混乱が過去にもあったことから、過去教訓を参考にしながら他の災害同様、企業内ネットワークを利用して全体の状況把握をすることが求められます。従業員全員の安否の確認と、勤務中に被災する可能性もあるので勤務中の従業員には避難・救助・安否確認を円滑に迅速に行うことが理想です。

災害によって内容は異なりますが、全従業員との連絡網が整備されていることが重要で、勤務中・勤務外どちらで災害が起こっても全体の状況が把握でき、全員の安否確認と今後の行動指示が的確にできることが大事です。
全員の命を守るために最善を尽くすにはどうするかということが最も重要なことです。

2. 社内コミュニケーションが出来ていないと起こる不都合

災害が起こった時、職場コミュニケーションが良好で日頃から意思疎通が出来ている職場では被害が少なく済む可能性が高くなります。その理由は以下の通りです。

  • 急に起こる災害でも互いに意思疎通をして協力できる
  • 社内で連絡・意思疎通するツールや窓口が整備されている
  • 声を掛け合って協力して安全な場所に避難できる
  • 日頃から災害時の行動計画をしているので慌てない
  • 仲間を災害から助ける意識が高い
  • 上層からの指示を全員で共有する意識が高い

このように社内コミュニケーションは非常に重要です。

災害が起こった時、企業内での情報交換手段が重要

例えば震度7といった大きな地震が就業時間内に起こるのか時間外で起こるのか、予測はできません。企業としては何よりも就業時間内・時間外問わず、避難行動の次に現状把握が重要です。地震が多い日本では、東日本大震災クラスが起きると被害は甚大なものになると想像することができ、阪神淡路大震災・東日本大震災の教訓を基にしながら、企業の対応を考える必要があります。

ここで考えておかないといけないのが、常に社会は変化し通信手段の方法も変化するということです。

以前はガラパゴスケータイ(略称:ガラケー)がメインだったものがスマートフォンに、通話も電話からLINEといったツールへの移行といった形で人々が使う情報伝達手段も変化するため、それを考慮して考えていく必要があります。つまり、より多くの人が使っている通信手段(連絡手段)をメインにし、個々が使っている通信手段もカバーしていく必要があります。防災専用のクラウドツールを提供している企業などもあり、自社に合った情報共有・伝達方法を用意することが求められます。

企業内での災害時通信ツール

  • 電話(固定電話/スマートフォン/公衆電話)
  • LINE・各種SNS・ビジネスツール(チャットワーク等)
  • 自社専用コミュニケーションツール等
  • 社外提供のクラウド災害用ツール(災害ネット等)

災害時に使えるかどうかが通信手段の最大の懸念

過去の事例から実際にどういう状況になる可能性があるのかを事前に考えておくことは有効なことです。例えば震度 7 以上の地震が起こった場合、

① スマートフォンに直接アクセスして情報共有する(電話・ LINEなど)
② クラウドを介して情報共有する(自社チャット・ SNS など)

① のスマートフォンにダイレクトに連絡する方法は、被災をして万が一スマートフォンが水没したり紛失すれば目的の相手との通信は不可能となります。津波被害に遭遇したりするとこういった可能性は高いです。
② の方法であれば万が一のことがあってもWi-Fi圏内に行ってインターネットにアクセスすることで情報共有ができます。

被災しても企業内全員が最短でアクセスできる環境作り

被災をして通信環境が無くなったとしても、数日経過すれば回復してきます。被災から時間が浅くても避難所でWi-Fiが使えたり、被災者が移動することで通信環境が得られたりすることもあります。ポイントは複数のコミュニケーションツールや連絡方法を企業が用意しているかどうかです。選択肢が少ないと個々の状況によってコミュニケーション手段が無いという状況も出てきます。

  • 社内用緊急連絡固定電話を開設
  • FAXも役立つことがある(コンビニから送信可能)
  • 社内チャットツール等のクラウド環境の整備
  • 社内連絡用LINE等の整備
  • 衛星電話といった特殊通信ツールの整備

通信遮断を予測して「想定外」をできるだけ減らす

内閣府が公開している直下型地震が起こった場合の想定や過去の震災の実際のデータを見ると、以下のようなことを想定しておくのが無難です。

  • メールやLINEの延滞が起こる可能性がある
  • 一時的に通話出来ない(話し中含む)ことがある
  • インターネット回線の 1 割~ 2 割が破壊され一部通信不能の可能性がある

衛星電話を用意しておくというのは有効な手段ですが、全ての従業員に持たせるのは現実的ではないため、企業であれば部署リーダーに 1 台といった割合で所持して代表電話番号となる緊急窓口を用意するのが良いでしょう。多くの過去の災害では当日は混乱することが多いですが、数日で人が移動したり状況が回復したりしているので、コミュニケーションの軸となる連絡先はすべきです。
クラウド上のコミュニケーション窓口と電話などの窓口を両方用意しておくようにしましょう。

3. 災害後パニックにならないためにできること

事前に災害が起こったことを想定したコミュニケーション窓口や部署、部署ごとのリーダーが決まっていない場合、全員の事情や使っているスマートフォンの電話番号リスト等を平常時に整理しておくことは大事です。特にクラウドでのツールを活用する場合には、普段使い慣れているほうが災害時もスムーズに利用できます。ただし日頃スマートフォンを使っていない、使いたくないという方は電話・ FAXでの通信方法を使うなど、無理に強制するよりも個々に合わせたほうが全員と円滑に繋がるという意味で成功します。

  1. 平常時に全員が参加したテストをしておく
  2. ガラケー使用者等にも対応した複数の窓口を用意する
  3. 電話・インターネット経由・FAXなど複数の手段を用意する

企業の総合窓口 各グループリーダーを整備

災害時の企業内でのコミュニケーションを円滑に行うために日々の業務の中でグループを決めて小グループ単位でのリーダーを設置すると円滑に進みます。小さいグループ単位でリーダーが配下の連絡先をまとめ、企業の総合窓口に情報を上げる方式に整備しておくと総合窓口は全体の把握がしやすくなります。こうした構成内訳は企業規模によって変わるので、最もトラブルが少なくスムーズに実施できる方法を採用すべきです。

4. 災害時の企業内でのコミュニケーション能力を最大に

災害は日本全国で起こる可能性があります。昨今では異常気象が言われるように大雨や土石流等身近な所でも起こることを想定しなければ、身に降りかかってからでは業務維持の大きな打撃となりかねません。BCPという言葉が聞かれるようになってきていますが、まだまだ対策をしっかり取っている企業は多くなく、早急に体制を整えておく必要があります。

  • 最悪の状況を平常時に想定してコミュニケーション環境を構築する
  • 通信の遮断、機器が使えなくなることも想定する
  • 複合型思考で窓口をいくつも用意しておく
  • 年齢問わず普段から利用するツールに対応できるようにしておく
  • 日頃から従業員にヒアリングや対話をして状況把握をする
  • 社内組織・伝達グループを整理して構築しておく

これらのポイントを抑えながら万が一の時に円滑に社内コミュニケーションが取れるようにしておくことは、従業員の安全・安否といった基本的な部分を把握するだけでなく災害後の企業運営についての判断にも影響します。災害時はネットや TV でニュースが流れますが、現地に関係者がいる場合、現地からリアルな情報が伝わることで、状況を常に新しく更新することが可能です。
企業にとって災害時に最もリスクとなるのは、事業が継続できなくなることと同時に、関係者の安全が守れるか、安否確認が迅速にできるかどうかです。災害時の企業内コミュニケーションは、災害が目の前で起こってからではなく平常時に十分対策をし、万が一災害が起こった時には全て想定内で全体が動いていくことを目標にしていきましょう。

*記載の会社名および商品名は、各社の商標または登録商標です。