BIPROGY Foresight in sight BIPROGY Foresight in sight

【バーチャル災害対策本部のススメ】COVID-19/テレワークで変わる災害対応

BCP・災害対策コラムは、企業のBCP・災害対策に役立つ基礎知識をご紹介します。

型コロナウイルス(COVID-19)の影響により、3密を回避するために人々の生活や企業の働き方は大きく変化しました。それに伴い、災害対応の核となる“災害対策本部”の運営も、大きな変革を迫られています。ヒトが“密”になることを回避し、集まらずに情報共有は“密”に行う「バーチャル災害対策本部」についてまとめました。

COVID-19/テレワークで見直しが急務の災害対策本部

新型コロナウイルス(COVID-19)(以下、コロナと称す)の影響により、密閉・密集・密接の「3密」を避けるために人々の生活は大きく変わりました。厚生労働省のホームページには、コロナと共存していくための【新しい生活様式】として「①身体的距離の確保」「②マスクの着用」「③手洗いうがい」を実践例として公表しています。特に「①身体的距離の確保」については、働き方においても「テレワークやローテーション勤務」「時差通勤でゆったりと」「オフィスはひろびろと」「会議はオンライン」「対面での打ち合わせは換気とマスク」といった5つの新しいスタイルが掲げられており、このような働き方の変化の加速により、オフィスの解約や縮小へと踏み切った企業まであります。これまでは人を“密”に招集し、対面での“密”なコミュニケーションが当たり前であった業務においても、Withコロナ時代では感染予防のためにヒトを“疎”な状態にし、その上で“密”なコミュニケーションをとることが求められています。また、もし対面での会議等が必須な場面においても、集まる人数の制限が設けられ、アクリル板の設置やソーシャルディスタンスの確保などの対策が、今後も当たり前に求められる世の中へと変化していくことが予想されます。

これは、災害時に立ち上げられる災害対策本部においても、例外ではありません。これまでの災害対策本部といえば、1つの部屋へ大人数を招集した上で、各拠点や部署の被害状況の把握、必要な資源の確保・配分、対応方針の決定、組織・部門間の調整といった情報をホワイトボードや模造紙に書き、情報整理・共有していくことが当たり前の光景でした。しかし、これまでのやり方では「密」が避けられない場面も多く、結果として対策本部要員は罹患リスクと常に隣り合わせの状態となり精神的に負担も多大なものとなります。また、災害対応の要である対策本部内でのクラスターが発生してしまうと、会社としての復旧が大幅に遅れ社会的影響やそれに伴う被害は膨大なものとなってしまうことは、想像するに容易いことでしょう。そのため各企業の災害対策本部は、急ピッチでWithコロナ時代にも耐えられる運営や体制を整えていかねばならないという、大きな岐路に立たされています。

出典:消防防災科学センター「災害写真データベース」
出典:消防防災科学センター「災害写真データベース」

テレワークによる“情報共有”の変化 ―バーチャル災害対策本部―

前述の通り、コロナ禍によりテレワークが当たり前となったことで、Web会議システム(Zoom、Microsoft Teamsなど)やチャットツール(LINE Worksなど)のコミュニケーションツールがより一層普及し実業務へと定着してきました。これらのツールに対する各人の利用スキルも向上し、今までリモートでのコミュニケーションにマイナスのイメージを持っていた方でも、テレワークにおいてはなくてはならないツールとなっているのではないでしょうか。Web会議システムを使えば全員が同じ資料や情報を見ながら打ち合わせをすることも可能ですし、チャットツールを使えば、少人数での気軽なやり取りも簡単に出来るようになりました。これらのツールは今後のWithコロナ時代において各企業の業務遂行に必要不可欠なツールとしてさらに定着していくことでしょう。 災害対応においても、これらのツールを駆使し極力リモートの環境で災害対応を行う災害対策本部すなわち、【バーチャル対策本部】を前提とした訓練や災害対策本部の在り方を検討している企業が急速に増えています。

では、Web会議システム、チャットシステム等だけで、【バーチャル対策本部】は実現できるのでしょうか?各ツールは、それぞれ得意分野があり、場面によって最適なツールとなりうります。Web会議システムは、対面でなくてもお互いが表情を見ながらコミュニケーションをとったり同じ情報を見ながら会議したりすることが得意なツールです。また、チャットは、個人や数人の間での情報共有にとても有効です。
一方で、災害時の情報共有は事業継続に関わる意思決定を目的とし、経営トップに対うる報告書の基となるような“組織レベル”の情報を、複数の部署を跨ぎ、スピード感をもって共有していくことが求められます。また、災害時は、“大量の情報が一気に入ってくる”“次から次へと状況が変化”といった特有な状況下での情報共有となります。そのため、時系列(=クロノロジー)で最新情報を把握し、大量の情報の中から必要な情報を抽出、事象の経過を追えることが必須となります。これまであげたようなツールは、リアルタイムでの情報共有には有効ですが、情報はどんどん流れて行ってしまうため、災害時に必要な“どれが最新情報なのか”“重要な情報はどれなのか”を瞬時に抽出することが難しく、結果として重大情報の見落とし、対応の遅延や漏れ、誤った優先順位付け、といった事態が起こってしまう可能性があります。そのため、組織として「意思決定の基となる情報」を溜められる場所、かつ情報共有がスムーズに出来るツールが必要となります。

こういった情報の入力場所をExcelで作ったフォーマットや掲示板ツールと定めているケースが多くあります。この場合、だれが(どの階級の人が)情報を見ているかわからないという入力者の心理的負荷により、本来最も重要な現場からの情報が集まらない可能性があります。逆に組織毎にページやExcelファイルを分けて管理すると、組織間での情報共有に大きな手間や負担がかかり、結果的に意思決定者へ情報が行き渡るまでのスピードが遅くなってしまうというジレンマを抱えることになります。

災害ネットの位置づけ:情報取集、共有、管理、

BIPROGYは前述のようなジレンマを解消し、災害時の情報共有に特化した情報共有ツール「クロノロジー(時系列)型危機管理情報共有システム 災害ネット」を提供しています。災害ネットは、災害時には必ず用いる手法である「クロノロジー」を一本の軸として、情報を管理します。「クロノロジー」とは、災害時などに発生する情報を時系列に沿って書き出して管理する手法です。多くの危機管理の現場で活用され効果を上げています。これにより、最新情報の把握やこれまでの対応履歴などを簡単に確認することが出来ます。また、組織ごとにページを持つことにより心理的負荷の軽減を実現しつつ、組織間での情報共有も記事毎に簡単に出来るというシンプルな操作性で、必要な人へ必要な情報を濾過しながら確実に伝播させていくことが出来る仕組みです。災害時には、チャットで個々のコミュニケーションを密に取り、組織として共有が必要な情報は、Web会議システムと災害ネットの組み合わせで情報共有をしていけば、これまで同様、あたかも同じ会議室にいるような感覚で迅速に対応できる【バーチャル対策本部】を実現することに繋がります。

Withコロナにおける災害対策本部のBefore-Afterイメージ

Withコロナにおける災害対策本部のBefore-Afterイメージ

日本企業の災害対策本部を強くしたい
——BCPにかけるBIPROGYの想い

かつては地震大国・日本としてBCP(事業継続計画)のメインは数年に1度起こるかもしれない地震と考えられていました。しかし、国土交通省や気象庁の調べによると過去10年の間に97%の市区町村で水害が発生、大雨の発生数は30年前と直近の10年を比較すると1.3倍に増加など、事業継続のリスク対象となる災害が多岐に渡り、もはやBCPは毎年のように実践されるものへと変化してきています。

気象庁「図 全国の1時間降水量50mm以上の年間発生回数の経年変化
出典:気象庁「図 全国の1時間降水量50mm以上の年間発生回数の経年変化
内閣府「市町村のための水害対応の手引き」
内閣府「市町村のための水害対応の手引き」

また一度の災害における被害額も数億円から数百億に上っていることから、各企業は災害からうける被害を少しでも少なくするためには、常日頃からの訓練を通して事業復旧に向けた対応策を出来る限り考え、BCPの精度を上げるために尽力されていることかと思います。
必ず起こってしまう災害。各企業の災害被害を最小限にするために出来ることとして、当社は「日本企業の災害対策本部を強くしたい」という思いのもと、「クロノロジー(時系列)型危機管理情報共有システム 災害ネット」を開発しました。

災害ネットを使うことで、これまで災害対策本部のボトルネックとなっていた情報処理が軽減されます。すると、災害対策本部の本来の役割であるブレーンとしての人間力が最大限に引き出され、今までの訓練ではたどり着けなかった課題が浮き彫りになります。本来の課題が分かれば、その課題をどうやって解決しよう、誰を担当にしよう、意思決定の基準はこれにしよう、といったようにBCPの検証・強化のサイクルが回るようになります。つまり、これまでのような情報処理に忙殺されて終わるだけの訓練ではなく、最も重要目的であるBCPの精度を上げるための訓練を行うことが出来るようになるのです。このことによって、災害対策本部を強くし、各企業の事業復旧スピードを向上させ、強いては日本全体の災害復旧スピードを向上させたいというのが災害ネットの想いです。

また、自助・共助・公助がバランス良く機能することで、災害に対する対応力・適応力を強化した社会を実現していきたいと考えています。そのため、災害ネットというツールのご提供だけではなく、多岐にわたる災害対応(電源の確保や対応場所の確保など)に対し、当社と他社との共助の姿勢でご提案させて頂くことで少しでもお客様の力になりたいと考えます。
災害は必ず起きます。その備えを一緒にお手伝いし、もしもの時に対応できる自信をお客様に持っていただくために、これからも災害ネットは【日本企業の災害対策本部を強くしたい】というスローガンのもと成長を続けていきます。

*記載の会社名および商品名は、各社の商標または登録商標です。