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IWMS/FMソリューション「ARCHIBUS」

カーボンニュートラル実現に向けた施設管理の取り組み方について解説!

IWMS/FMソリューション「ARCHIBUS」コラム
2022年11月14日

近年、脱炭素化社会に向けて積極的な取り組みを行う企業が増えていることから「カーボンニュートラル」という言葉を耳にしたことがある人も多いでしょう。
しかし、実感を持って「カーボンニュートラルとは何か」「実現には何が必要なのか」を理解している人は少ないのではないでしょうか。
そこでこの記事では、カーボンニュートラルの意味や、施設管理ではどのような取り組みを行えば良いのかを中心に解説します。

カーボンニュートラルとは

カーボンニュートラルとは、広い意味で言えば、地球温暖化を防止することを目的とした脱炭素社会に取り組む考え方を指しています。
より詳しくとらえるなら、地球上に出される温室効果ガスの排出量と吸収量・除去量のバランスを取ることを「カーボンニュートラル」と呼ぶのです。
そもそも温室効果ガスとは、主にCO2やメタン、フロンガスなどを意味しています。
日常生活を送るにあたって、私たちは多くの温室効果ガスを排出しています。火力発電で作られる電気は、石炭や石油、天然ガスなどの大量の化石燃料を燃焼しており、その際はたくさんの温室効果ガスが排出されるのです。
自動車や航空機などを利用するだけでも、温室効果ガスは大量に排出されます。世界には、暮らしの利便性が追求されればされるほど、たくさんの温室効果ガスが排出されている現状があります。
温室効果ガスが多く排出され続ければ地球温暖化はどんどん進み、異常気象が増えるので世界中の経済や生態系にも影響を及ぼし、私たちや動植物などの暮らしが脅かされてしまうのです。
だからこそ、温室効果ガスの排出量を削減する必要があります。
しかし実際は、排出量をゼロにすることは現実的とは言えません。
そのため温室効果ガスの決まった排出量は、そのぶんを森林での吸収や、人為的な除去などで差し引きすることによって、実質的にゼロにすることが目指されています。
このような均衡を取るような考え方を「カーボンニュートラル」と言います。
カーボンニュートラルとは

カーボンニュートラルに至るまでの背景と国内外の方針

「カーボンニュートラル」という考え方が確立した経緯には、ある背景があります。
カーボンニュートラルに至るまでの背景を知り、理解をより深めましょう。
さらに国内外の方針も紹介しますので、カーボンニュートラルに取り組む上での参考としてチェックしてみてください。

背景

近年、地球温暖化が注目されていますが、実は地球温暖化が注目され始めたのは1970年代に遡ります。
1995年になると「気候変動枠組み条約第1回締約国会議(COP1)」がドイツで開催され、そこでは温室効果ガスの排出量が多い先進国に向けて、排出量の削減義務を強化することが採択されました。
また、2015年には「パリ協定」が定められ、「世界の平均気温上昇を産業革命前より1.5℃に抑える努力を行う」ことを世界共通の目標としています。その目標を達成にするには、2050年には世界全体で温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする必要があります。
パリ協定の前に定められた「京都議定書」(1997年)では先進国のみを対象としていましたが、パリ協定では開発途上国も含めた世界全体で取り組むべき目標として掲げられました。
そして現在では、世界各国が脱炭素社会を叶えるため、カーボンニュートラルに向けて本格的に取り組んでいます。

世界と日本の方針

カーボンニュートラルへの取り組みは、国によって方針が異なります。
まず、2019年度に世界で5番目に温室効果ガスの排出量が多いという結果が出た日本の場合は、経済と環境の好循環を作るためにグリーン成長戦略が採用されています。
世界と日本の方針
この戦略は、温室効果ガスへの対策が求められるものの成長が期待される自動車・蓄電池産業や、洋上風力・太陽光・地熱産業などの14分野が対象です。
さらに「第6次エネルギー」として再生可能エネルギー源、とくに水素エネルギーの導入が検討されています。水素は燃やしても二酸化炭素が排出されず、さまざまな資源から作り出せることから、日本は水素社会の実現に向けて取り組みが進められています。
温室効果ガスの排出が世界で最も多い中国も、水素社会を叶えるための技術開発がスタートしています。現在のアメリカでは電力の脱炭素化やグリーンエネルギー化を目指しており、気候変動対策への取り組みを加速させています。
世界でいち早くカーボンニュートラルに目を向けたEUでは、2005年時点から二酸化炭素の排出量が多い企業に課金する制度を取り入れたことによって、企業が自主的に二酸化炭素の削減を行うようになりました。

カーボンニュートラル実現に向けた施設管理の取り組み方

ここまでカーボンニュートラルに至った背景や、日本を含め各国の動きを紹介しましたが、施設管理ではどのような取り組み方があるのでしょうか。
カーボンニュートラル実現のために、施設管理が取り組むべき内容を解説いたします。

二酸化炭素の削減

温室効果ガスで最も注目されているのは二酸化炭素です。
二酸化炭素は電力を消費することで、たくさん排出されてしまいます。人類が生活するには、電気の利用は欠かせないものですが、電気による二酸化炭素の排出量を抑えなければ、カーボンニュートラルの実現は遠のいてしまうでしょう。
環境省によると、2019年度において部門別に発表された日本のCO2排出量は、電力が全体の42%を占めていました。この数字は、他の部門に比べてはるかに多い量です。
二酸化炭素の削減には、石炭や石油発電所から作られる電力を再生可能エネルギーに変えることが必要でしょう。

植林の有効活用

温室効果ガスの削減には、植林を有効活用する方法もあります。
再生可能エネルギーなどで二酸化炭素量を減らしたとしても、温室効果ガスの排出量をゼロにするのは難しいことから、排出された二酸化炭素を吸収することが求められています。
その点で注目されているのが、植林の有効活用です。植物は排出された二酸化炭素を吸収してくれるので、カーボンニュートラルの取り組みには欠かせないものと言えるでしょう。
さらに、世界中で木材を有効活用した製品が増えることによって、二酸化炭素の排出量が実質的に抑制される効果も期待できます。

再生可能エネルギーの利用

カーボンニュートラルの取り組みには、再生可能エネルギーの利用について考えるのが不可欠です。
2050年までに温室効果ガスを実質的にゼロにするため、再生可能エネルギーへの道は無視できません。
再生可能エネルギーには「太陽光発電」「洋上風力発電」「バイオマス」「地熱発電」「水素エネルギー」などが挙げられます。それぞれ実用性やコスト面の課題などの解決が必要ですが、どのエネルギーも研究や開発が進められており、今後の活用に期待が高まっています。
再生可能エネルギーの種類や内容などを知っておくだけでも、カーボンニュートラルの実現に近づくはずです。

省エネルギーの実現

「省エネルギー」という言葉は一般にも使われており、とくに家庭では節電対策としても注目されています。しかし「省エネルギー」という言葉のそもそもの意味は、限りあるエネルギーを効率よく利用することを意味しています。
省エネルギーの実現は、家庭で省エネルギーを意識している人も多く、身近に考えられるものかもしれません。家庭でも省エネルギーの取り組みが求められていますが、企業においては国から支援が受けられます。1979年に制定された省エネ法により、補助金や助成金などが用意されているのです。
カーボンニュートラルに向けた取り組みをするのならば、積極的に支援を活用することをおすすめします。

カーボンニュートラルに取り組むと得られる恩恵

カーボンニュートラルに向けた取り組みはさまざまで多くの工夫が求められますが、得られる恩恵はとても大きくなっています。
どのような恩恵があるのか、詳しく深掘りしていきましょう。

コストを削減できる

カーボンニュートラルに取り組むと得られる恩恵には、コストの削減が一番に挙げられるでしょう。そのため、企業においては固定費の削減にもつながるはずです。
たとえば、太陽光発電などの再生可能エネルギーを利用すれば、電力にかかるコストが大幅に削減されます。
また、今後は化石燃料の高騰化により、エネルギーコストが上昇する恐れがあります。とくに、中小企業の中には価格の上昇によって製品やサービスを値上げすることも難しく、経営が厳しくなっている声も高まっているのです。
カーボンニュートラルへの取り組みがコスト面のリスクを減らし、自社を成長させることに直結するでしょう。今のうちからコスト面を考慮し、エネルギー対策を行なっておくと良いかもしれません。

信頼性を上げられる

カーボンニュートラルに取り組んでいると、消費者や取引先からの信頼性を上げられる可能性があります。
社会的な問題である環境問題に真摯に向き合っている企業は、イメージアップも可能です。
たとえば、環境問題に取り組んでいる企業は、自社ホームページに具体的な活動を記載していることがほとんどです。
とくに、最近の消費者は「自分が消費するサービスや製品はどのような企業が関わっているのか」と企業の姿勢を重視して行動する人もいます。そこで環境への取り組みが掲載されていると、好印象を残せるはずです。
また、これは消費者だけでなく、他社や取引先への信頼度の向上にもつながります。信頼度やイメージが良くなれば、安定した経営もできるでしょう。

収益を上げられる

カーボンニュートラルを実施する事業を行なっている、もしくはそのような事業を計画している人は「J-クレジット制度」を利用できます。
J-クレジット制度の仕組みは、削減・吸収した温室効果ガスをクレジット化することによって、他企業に販売し収益を得ることができます。
たとえば、照明設備や空気整備などの省エネルギーを実施することも、対象になります。化石燃料を太陽光発電などの再生可能エネルギーに代替する、森林を定期的・計画的に間伐するなどの管理をしていることが認められれば、J-クレジット制度によって収益を増やせるでしょう。
J-クレジット制度の利用には、事務局に申請手続きを行う必要があるので、気になる人はチェックしてみてください。

ESG投資対策になる

カーボンニュートラルへの取り組みは、ESG投資対策にもなります。
まず、ESGとはEnvironment(=環境)、Social(=社会)、Governence(=企業統治)の頭文字を取った言葉で、この3点は企業が取り組むべき課題としても知られています。ESG投資は環境や社会、企業統治の視点から企業を分析して投資する方法です。
金融機関や投資家の間では一般的ですが、まだ情報を十分に掴めていない企業もいます。企業がカーボンニュートラルの実現に向けた活動をアピールすると企業のイメージアップにつながり、ESG投資による資金調達ができる可能性が高くなります。

カーボンニュートラル実現に向けた企業の取り組み事例

カーボンニュートラルへの取り組みが遅れると、経営のリスクが上がってしまうこともあります。
他社との差別化も実現するので、カーボンニュートラルのために動き出すことは経営に良い影響を与えるはずです。すでにカーボンニュートラルに取り組んでいる海外企業と日本企業の事例を紹介しますので、ぜひ参考としてお役立てくださいね。

海外企業の事例

まず、海外の事例をチェックしていきましょう。
カーボンニュートラルの実現を試みるロンドンのイズリントン地区では、地下鉄を運営するときに出される排熱を利用する動きが見られます。大ロンドン庁によると、地下鉄排熱はロンドンでの暖房需要の約4割を占めるエネルギー量だと推定されています。
その地下鉄の膨大なエネルギー量を企業や家庭の暖房に活用することによって、使用される電力が削減される効果が期待されているのです。ロンドンのイズリントン地区は、街ぐるみでカーボンニュートラルに取り組むロールモデルになるかもしれません。
海外企業の例では、アウトドア用品を製造販売するパタゴニア社を見てみましょう。
アメリカに本社を構えるパタゴニアは、企業理念として「故郷である地球を救う」を掲げている企業でもあります。カーボンニュートラルに取り組みにおいては、環境再生型有機農業を実施しています。
この農業では有機肥料を利用することで、土壌の環境を修復・改善しながら自然環境の回復を促すものです。環境の回復につながるだけでなく、農地の土壌を健康的に保つこともできます。
環境再生型有機農業は「リジェネラティブ農業」とも呼ばれており、気候変動を抑える有効な手法としても注目を集めています。
最後に、ドイツのダイムラー社を見ていきましょう。世界的にも有名な自動車を製造するダイムラー社とその関連会社は、カーボンニュートラルの実現に向けて燃料電池自動車を開発しています。
ダイムラー・トラックが2020年9月に発表したのは、大型FCVトラックでした。この製品は、長距離輸送が可能な燃料電池自動車です。1,000キロメートル以上の走行が可能となっており、長距離移動による温室効果ガスの排出量を削減できるようになっています。2020年代の後半に量産が予定されており、開発が急速に進んでいます。

国内企業の事例

国内においても、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みが盛んに行われています。

【花王株式会社の事例】

生活用品や化粧品などが有名な花王株式会社では、工場の省エネ化に取り組んでいます。さらに、リサイクルや植物由来の樹脂、薄いダンボールを利用するなど、より低炭素な原材料を使用することを小さなところから徹底しています。
花王株式会社は「2050年までにカーボンネガティブを目指す」という目標も掲げており、企業全体で温室効果ガスの排出量を減らす取り組みに積極的な姿勢を見せています。「カーボンネガティブ」とは、温室効果ガスの排出量よりも吸収量が多い状態を指していいます。
このことからも温室効果ガスの排出量に関して、とても意識の高い姿勢であることがわかるはずです。

【阪急電鉄の事例】

阪急電鉄の摂津市駅の例もチェックしていきましょう。
阪急電鉄の摂津市駅は、国内の駅で初めてカーボンニュートラルの目標を達成した、有名な駅です。
摂津市駅は主に太陽光発電の活用や、LED照明の導入によって約36トン分の二酸化炭素排出量を削減しました。

【セコム株式会社の事例】

また、警備における大手企業として知られるセコム株式会社でも、カーボンニュートラルの取り組みが行われています。
セコム株式会社は、オフィス内にある蛍光灯をLED照明にしたり、高効率な空調機器や省エネ性能の複合機を導入したりすることによって、カーボンニュートラルの実現しようとしています。
会社として「2045年までに温室効果ガスの排出ゼロを目指す」と掲げており、細部の積み重ねで実現する動きがあることがうかがえるでしょう。

まとめ

カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みは難しいことだと考えられがちですが、小さなところから始めることができます。
施設管理においてできる取り組みは、数多くあります。
まず自社の予算と相談し、どのような取り組みからできるのかを起点にカーボンニュートラルの取り組みを導入することをおすすめします。
また視点を変えてみれば、温室効果ガスを削減できるポイントがたくさんあるかもしれません。はじめから大きなことを始めるのではなく、できるところから始めてみましょう。
まとめ